楽しさと効率の間:真の学び方
古の賢人は「書山有路勤爲徑 、學海無涯苦作舟」と格言を垂れ、学問とは汗と涙の旅路だと説きました。一方、現代の若者は「楽しく、スマートに」学びたいと言う。一見、水と油のようなこの二つのアプローチ。果たして、どちらが正解なのでしょうか?
学習スタイル理論「VARK」を聞いたことがあるのでしょうか。視覚、聴覚、読み書き、実践の4つの型に人間の学習スタイルを分類するこのモデルに、最新の研究はおもしろい結論を導き出しました。自分の「好きな」学習スタイルで学んでも、学びの質は上がらないというのです。(Cindi May, The Problem with "Learning Styles”, Scientific American, May 29, 2018.)
つまり、「楽しく学ぶ」と「効果的に学ぶ」は、別物なのであります。むしろ、以下の4つの普遍的な学習方法が、あらゆる人に効果的であることが分かっています。
(1)間隔を空けて学習
一気呑みは禁物。人間の脳は、少しずつ、適度な間隔で情報を消化するのが得意なのです。
(2)多様な方法で学ぶ
同じ内容を、異なる方法や場所で学習することで、脳は多角的に情報を処理し、理解を深めます。これはVARKの4つの学習要素を総合したものと捉えることもできます。
(3)定期的に確認
自己診断は学びの健康診断。自分の理解度を定期的に確認することで、知識の定着と弱点の発見につながります。
(4)知識の連結
新しい仲間を既存のチームに溶け込ませるように、新しい情報を既存の知識と関連付けることで、理解と記憶の質が格段に向上します。
これらの方法、驚くほどシンプル。高度な技術は不要です。実行は簡単ではありませんが、コツコツ続けることが肝心。
話が変わりますが、私の授業でも、偶然にも、VARKの4つの学習要素を無意識のうちに取り入れていました。例えば、経営分析の授業では、配布資料で読み書き、解説で聴覚、図解や動画で視覚、企業事例研究で手を動かして実践と。VARKを意識したわけではなく、長年の試行錯誤の中で自然に辿り着いたのです。
もちろん、受講生全員の集中力とモチベーションが一気に跳ね上がったわけではありません。まだまだ改善の余地あり。
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